2017年6月29日木曜日

誰が公明党に投票しているか?

 事実上、創価学会の政治部門に過ぎない公明党に、好きこのんで投票する奇特な方は、
創価学会員以外にはいないのではないか、と思われる方も多いであろうが、選挙結果を見
てみると、どうもそうではないらしい。

 参議院全国区の投票結果は、各政党への有権者の支持を現わすものとして、最も信頼で
きるものと考えられるが、公明党は過去数回の選挙で、7百万~8百万票台を得票している。

<参考> 参議院選挙全国区の公明党得票数

 第18回 平成10年(1998年) 7,748,301
 第19回 平成13年(2001年) 8,187,805
 第20回 平成16年(2004年) 8,621,265
 第21回 平成19年(2007年) 7,765,329
 第22回 平成22年(2010年) 7,639,432
 第23回 平成25年(2013年) 7,568,082
 第24回 平成28年(2016年) 7,572,960

 昨年実施の選挙結果について、少し詳しく考察する。
 前回示したように、創価学会員の実世帯数は、260~280万世帯程度と考えられる。この
中間値である270万に、平均世帯人員と選挙権年齢である18歳以上の割合を乗じて、公明
党に投票したであろう、創価学会員の数を推定する。

  270万(創価学会世帯数)× 2.38(平均世帯人員)× 84.7%(18歳以上の割合)
 = 5,442,822(人)

  平均世帯人員:2.38人(平成27年国勢調査)
  18歳以上の割合:84.7%(人口推計(平成28年10月1日現在)総務省統計局)

 創価学会員の数は540万人程度と推定されることから、前回参院選では学会員以外で公
明党に投票した者が、200万人以上いたことになる。

 さて、この200万人はどのような人々であろうか。創価学会が「F取り」と称して、熱
心な選挙運動に学会員を駆り立てていることは、よく知られているところである。

 しかしながら、学会員から投票依頼を受けたところで、普通の人なら、唯々諾々とそれ
に応じたりはしないだろう。

 F取りでは、判断能力のない高齢者などを連れ出し投票させるなどの非常識な行為も、
時に行われるというが、F取りに協力している人のすべてが、そうだというわけではない。

 創価学会は莫大な資金力を有することから、ビジネス上のつながりをもつ企業も多い。
そのような企業の従業員の中には、商売上のつき合いとして、公明党に投票する者もいる
のだろう。

 今月発売された『文藝春秋』(平成29年7月号)に、「都議選で生じた『自公亀裂』の
行方」と題されたルポタージュが掲載されている。その中に、石井国交大臣が関与した選
挙運動について述べられているので、当該部分を引用する。


>  スーツに身を包んだ男たちが、車を降りるや次々に上階のバンケットホールに向か
> っていった。
> 「ようこそおいでくださいました」
>  にこやかに出迎えたのは、公明党の石井啓一国土交通相だ。三十分近くも列をなし
> て待つ大小ゼネコンや建設会社の幹部ら一人一人とあいさつを交わした。
>  経世会の全盛期とは隔世の感があるとはいえ、大手ゼネコンは、いまだに自民党の
> 「選挙マシーン」の一つに数えられる。
>  そうはいっても、中央省庁再編で国交省が発足した二〇〇一年以降、のべ十年近く
> にわたって大臣を輩出してきた公明党の「動員令」に業界は逆らえない。まして現職
> の大臣が出迎え、名刺交換すると聞かされれば否も応もない。
>  会合を事前に耳にした自民党建設族の重鎮は露骨に嫌な顔をした。
> 「いくら必死の都議選だからといって、ちょっとやりすぎじゃないか」
>  許認可といいう、「生殺与奪」の権を握る所管官庁の大臣を投入するのは、本来で
> あれば禁じ手だ。


 公明党から国交大臣が出ている以上、業界としてはその意向は無視できないというのが、
引用文の趣旨だが、創価学会とゼネコンは、創価学会が大規模な建築を行ってきたことか
ら、公明党が与党となる前からつながりがあった。

 創価大学や大石寺の正本堂など、多くの学会関連工事の受注は、大手ゼネコンに少なく
ない利益をもたらしてきた。

 平成25年(2013年)竣工した信濃町の広宣流布大誓堂は、大成建設が代表を務める共同
企業体が受注したが、その中には大林組、鹿島、清水、竹中工務店といった大手ゼネコン
が含まれていた。

 日本各地にある大小の学会施設(墓苑・研修道場・会館等)の建設も、ゼネコン・建設
業界にとってうまみのある事業だったことだろう。

 創価学会から選挙協力を頼まれれば、むげに断るわけにはいかなかったであろうことは、
容易に想像できる。

 創価学会を有力な顧客としているのは、建設業界だけではない。学会と関わりの深い企
業グループとしては、三菱グループが有名である。

 創価学会が、大石寺の正本堂を建立するために、学会員から浄財を募った際、旧三菱銀
行は「御供養金貯金箱」を寄付した。この貯金箱は、全学会員の世帯に配られたという。
 このことがきっかけとなり、創価学会と三菱は関係を深めていった。

 その当時、三菱の関連会社に対して、公明党への選挙協力の依頼があったという。その
内容を取り上げた記述を、以下に引用する。


>  一九六九年十二月二十七日、総選挙の投票日当日、「赤旗」は、三菱財閥グループ
> の損保部門を代表する大企業・東京海上火災と公明党の〝濃密な関係〟を特報した。
> 損保業界の大手、東京海上火災が、選挙戦のさなか、全国の支店幹部に本店部長名で
> 電話指示を出し、これがある支店で文書となった。「赤旗」はその事実をキャッチし
> た。「文書」にはこう書かれてあった。
>  「一、創価学会は当社の有力客先であり、三菱銀行の有力得意先である。三菱系と
> の結びつきが強く、三菱十会社ならびに各地三菱グループに、今回の衆院選で公明党
> の応援を依頼してきている」
> 「一、依頼事項、 1、今回の選挙に関し、創価学会より当店にあいさつがた依頼に
> こられるかも知れないが、その節は丁重に応対願いたい。すでに学会側には支店の諒
> 解も得てある旨話してある。2、当店の課長、参事以上の名簿を学会に提出してある
> ので、自宅に戸別訪問があるかも知れないが……」(以下略)。
 (「赤旗」特捜班『黒い鶴の犯罪 第一部』より引用)


 有力な得意先とはいっても、創価学会は反社会的なカルトである。商売のためならそこ
までするのか、と慨嘆せざるをえない。

 この話は、もう50年近く前の出来事であるが、創価学会と三菱との関係は、それ以降も
続いていった。


>  特徴的なのは、学会と「三菱」の間のビジネスにはしばしばどこか暗雲のようなも
> のが、ある種の疑惑がからんでいることだ。たとえば九〇年九月に池田の創設した富
> 士美術館がルノワールの絵画を四十一億円で購入したとき、そこには三菱商事や三菱
> 銀行が深く関与し四十一億円のうちの約十五億円が行方不明のまま迷宮入りしてしま
> っている。同じ九〇年の三月にも学会は約三十億円を投じて三菱商事から陶磁器を購
> 入したが、なぜか数億円もよけいに支払っているといわれている。また、学会の信濃
> 町一帯の土地買い占めでは三菱地所販売などが暗躍し、全国各地の巨大墓地開発では
> 三菱商事がダミーの役割をはたして住民反対運動の押さえ込みを策し、会館や高層ビ
> ルなどの建築を一手に引き受けてもいる。さらに、東京海上火災との間では各地の学
> 会施設を対象とした損保商品の〝偽装契約〟がささやかれている。ついでに触れてお
> くと、池田がスピーチする姿を全国の学会関係施設へ即時送信しているのは三菱グル
> ープの設立した宇宙通信株式会社の通信衛星「スーパーバード」である。
 (野田峯雄著『増補新版 池田大作 金脈の研究』より引用)


 三菱財閥は創業者の岩崎弥太郎いらい、国士的な社風を誇りにしてきたというが、その
矜持は、創価学会の金力の前に霞んでしまったものと見える。

 創価学会が莫大な財力を持つのは事実である。だがその資金力は、信者を洗脳して財産
を巻き上げることにより築かれたものだ。
 また、彼らが現在もなお、反社会的・反日的な団体であることも確かだ。

 ビジネスには、綺麗事だけでない面もあるかもしれない。競争社会を生き抜くためには、
時として取引相手の問題点に、ある程度は目をつぶる必要もあるのかもしれない(感心は
しないが)。

 しかし、選挙における投票は、ほとんどの有権者にとって、自らの思想・信条・意見を
実際の政治に反映させることができる貴重な機会である。

 自らの政治的権利を安易にカルトに委ねたりせず、よく考えて行使する。この当たり前
のことを、一人でも多くの有権者に実行してほしいと思う。

 一人ひとりの常識的な行動こそが、政治権力の私物化をもくろむ邪悪なカルトを弱体化
させるために、最も有効な手段のはずである。