創価学会には、会員の個人情報を管理するための「統監」という仕組みが存在する。
新規に入会した者については、個人情報を記した「統監カード」を作成し、その者が所
属する「地区」で管理する。
※ 前回も述べたが、「地区」とは創価学会の最小の組織単位である「ブロック」を幾
つか束ねた単位で、数十世帯が含まれる。
学会員が別の地域に引っ越す際は、それを統監責任者にも報告する。統監責任者はその
者の「統監カード」を新たな住所地の地区担当者に送付する。
普通の人が転居する際に、市役所等で行うのと似たような手続きを、学会員は創価学会
でも行うのである。
「統監カード」には、以下の情報が記されているという。
> 1 氏名
> 2 生年月日
> 3 入信年月日
> 4 帰省先住所
> 5 自宅電話番号
> 6 携帯電話番号
> 7 職業
> 8 本尊の安置状況
> 9 『聖教新聞』を購読しているかどうか
> 10 会合への参加状況
> 11 財務をしているかどうか
> 12 歴代の統監責任者
(島田裕巳著『親が創価学会』)
統監は、創価学会の組織運営上、重要な役割を果たしている。
各地区では、毎月「地区統監」という会議が開かれる。
地区統監では、新規入信や退会、転入・転出に伴う世帯数の増減を確認し、聖教新聞の
拡販実績や、各学会員の会合等への出席状況や活動実態についても集計する。その結果は、
地方本部を経由して創価学会本部にも報告される。
それだけでなく、地区統監では新たな活動家づくりについても話し合われるらしい。
創価学会には、名目上は信者になってはいるものの、活動実態のない学会員も少なから
ずいる。
そうした者に対して、学会活動への参加を促すために活動家が家庭訪問を行うが、その
標的の選定にも、地区統監で把握した会合等の出席状況が役立てられるらしい。
要するに、すべての会合に欠席している者よりも、座談会や本幹の中継にたまに顔を出
す者の方が、誘えば活動家になってくれるかもしれないと判断されるのである。
話は変わるようだが、創価学会の外郭企業・シナノ企画が作成した「Future2」という
動画を、インターネットでご覧になったことのある方もいらっしゃることと思う。
学会員の芸能人としてよく知られている久本雅美と彦摩呂が司会を務め、創価学会の信
仰に目覚めた青年が、荒んだ境遇から立ち直り、社会から評価されるようになる等のエピ
ソードを紹介する内容である。
その中に元暴走族の倉地君の自宅を、創価学会男子部の石川が訪問する場面を再現した
箇所がある。
> 18歳のある日 その訪問客は 突然やって来た・・・
> ドンドンドンドンドンドンドン ドンドンドンドンドンドンドンドンドン(ノック音)
>
> 石川「こんばんはー!倉地くん いますかー!」
> (ドアを開ける倉地くん)
> 石川「やあ!倉地くん!元気!」
> (石川をにらむ倉地くん)
> 石川「創価学会男子部の石川です!」
> 倉地「俺は宗教なんかに興味ねーんだよ!二度と来んじゃねえよ!」
> 石川「今日が都合悪かったらあの別の機会でも全然構わないんだけれども・・・」
> 石川「あ、そうだ!もしよかったら・・・」
> (ドアを閉める倉地くん)
この後も再三にわたり繰り返された訪問がきっかけとなり、石川の人格的感化力(もし
くは狂信者特有の威迫力)に影響された倉地君も信仰に目覚めることになる。
倉地君の親も創価学会員だったとのことなので、彼も生まれた時に入会手続きが取られ
ていたと考えられる。
しかし、彼が「俺は宗教なんかに興味ねーんだよ!」と述べているとおり、創価学会の
信仰を受け継ぐ気持ちはなかった。
だが、倉地君の親は、彼が創価学会の活動家になることを望み、一人暮らしを始めた際
に倉地君の意思とは関係なく、統監の住所を変更する手続きをとったのであろう。
だから、男子部の石川が訪ねてきたのである。
先に述べたとおり、創価学会の家庭に生まれた者は当人の意思に関係なく、親によって
入信の手続きが取られることがほとんどである。
そして、進学や就職によって親元を離れるのに乗じて、創価学会との関わりを断ちたい
と本人が望んだとしても、親が統監の手続きをしてしまうので、引っ越し先にも現地の活
動家が訪問してくる(そのまま学会活動に引きずり込まれる者もいるだろう)。
創価学会は、他の新興宗教よりも信仰が継承される割合が高いと言われる。その背景に
は、住民登録に類似した「統監」というシステムを採用し、それを利用した活動家による
家庭訪問が、それなりに効果を上げていることがあると考えられる。
学会員には非常識な者が多く、指導者である池田大作にもバカげた逸話に事欠かないこ
とから、頭がおかしい集団と思ってしまいがちだが、その組織機構にはシステマティック
な面もあるのだ。
創価学会の核はあくまでも狂信だが、それを支えるシステムは合理性を備えている。カ
ルトでありながら侮れない力を有しているのも、この二面性があればこそなのだろう。
参考文献
島田裕巳著『親が創価学会』
創価学会問題研究会著『創価学会婦人部』