2019年4月14日日曜日

書評『親が創価学会』(島田裕巳著)

 『親が創価学会』は、創価学会の家庭に生まれ育った2世が直面する様々な困難に焦点
を当てて執筆されているが、創価学会そのものの解説にもそれなりの紙幅が割かれている。

 著者の島田氏は非学会員向けの概説書として、過去に『創価学会』(新潮新書)をもの
しているが、それと同様、本書も「批判にも擁護にも偏らない」という姿勢で書かれてい
る。

 私は創価批判を目的としてブログを続けているので、本書の主張には同意できない点も
あるが、全体としては優れた内容だと感じた。

 上述のように、本書では創価学会とはどのような団体であるかの解説もなされている。
 具体的には、成り立ちや巨大組織に発展できた理由、日蓮正宗との関係などが記されて
いるが、要領よく的確にまとめられており、その内容には説得力があった。

 また、創価学会の複雑な地方組織について、宮城県や山形県を例として説明されている
など、これまでに出版された創価学会に関する本にはなかった情報もある。

 多額の金銭負担についても言及されており、島田氏は「私の知り合いには、一家で数千
万円を創価学会に出したという人間がいる」と述べている。

 別の個所では、過度な熱狂から多額の金を出すのは「ポトラッチ」――北米先住民が力
を誇示するために行っていた私財の蕩尽――だとも指摘している。宗教学者らしい卓見で
ある(かなり辛辣だとも思う)。

 本書の主要なテーマである、創価学会の2世信者が直面する困難についても、学ぶとこ
ろがあった。

 創価学会は簡単にはやめられない組織だと言われる。2世ならば、なおさらそうである。
 本書ではその理由の一つとして、創価学会が各信者の住所・氏名等の個人情報を把握す
るために設けている「統監カード」を挙げている。

 2世信者が創価学会と縁を切りたいと思い、新たな住所を報告せずに引っ越したりして
も、親が熱心な学会員であった場合、自分の子も信仰を続けることを望み、引っ越し先を
創価学会に届け出るので「統監カード」にもそれが記載され、その結果、新しい住居にも
現地の学会員がすぐ家庭訪問してくるのだという。

 島田氏は「なんとしても創価学会をやめたいのであれば、家族との縁を切るしかない。
そういうことは十分に起こり得る」とまで述べている。

 また、学会員が非学会員と結婚しようとした場合に生じる困難についても述べられてい
る。本書には、創価学会2世の男性と、顕正会2世の女性がつき合い、同棲までしたものの、
双方の親が信仰のことで衝突し、別れることになった事例が紹介されている。


 興味深い内容が多く記されているとはいえ、先に述べたように、私としては同意できな
い箇所も本書には複数ある。

 特に看過できないのは、池田大作に関する記述である。島田氏は池田の印税収入につい
て、過去のインタビューを参照して、次のように述べている。


>  ところが、池田氏本人は、月刊誌『現代』(講談社)の一九八〇年四月号に掲載さ
> れたジャーナリストの内藤国夫氏によるインタビューのなかで、「聖教新聞社からの
> 出版物の印税は、いっさいいただいておりません。それ以外の出版社の場合、いちお
> ういただきますが、税金を払った残りは大学や学園に寄付しております」と語ってい
> た。『人間革命』や『新・人間革命』は聖教新聞社から出版されている。
>  内藤氏はすでに故人だが、創価学会に批判的なジャーナリストで、創価学会批判の
> 本を何冊も刊行していた。その内藤氏が、創価学会の資産形成に池田氏の印税が大き
> く寄与していることを前提に話を聞いている。その点からすると、池田氏の語ってい
> ることは事実と考えていいだろう。


 内藤氏は『現代』1980年7月号で、このインタビューの反響について記事を書き、清貧
の指導者を演じて見せた池田の受け答えについて、「ウソ八百もいいところ」との内部情
報が寄せられ、池田の「美術品そのほかの創価学会財産の私物化は目に余るものがあるそ
うな」と述べている(「清貧の人? 池田大作」参照)。

 島田氏がそれを知らなかったとは考えられない。
 そもそも、島田氏は前著『「人間革命」の読み方』で、『人間革命』の本当の執筆者は
篠原善太郎氏だったことを指摘している。内藤氏からのインタビューで池田が語った印税
の寄付が事実だったとしても、人のフンドシで相撲を取ったというだけのことである。

 先の引用に続く箇所には「一時期は、池田氏のスキャンダルが頻繁に報道された。ただ、
そのなかに、池田氏が豪遊しているといった類のものはなかった」とあるが、これも事実
に反する(「池田大作のぜいたく」参照)。

 創価学会は、相当に問題のある団体である。はっきり言って、カルト以外の何ものでも
ない。その創価学会について、客観的な内容の本を書こうとすれば、批判的になるのは当
然である。

 本全体が批判的な記述ばかりにならないようにするためには、不自然な形での擁護を挿
入せざるを得なかったのだろう。

 ただ、だからと言って、島田氏が創価学会に完全に取り込まれているとまでは言えない
と思う(池田大作に関する記述は、相当に配慮されているが)。

 島田氏が、一方的な批判には組しない姿勢を取り続けたからこそ、幹部を含めた多数の
学会員からの取材が可能だったのだろうし、その結果として、一般人には知り難い内部情
報が含まれた本の執筆が可能になったことも、事実であろうからだ。

 『親が創価学会』は、異議を申し立てたい箇所もあるとはいえ、創価学会の実態を理解
する上で、少なからず有益な本だと評価したい。

 ※ 『親が創価学会』(イースト新書)は、2019年4月15日付で発行された(実際の発
   売日は4月10日)。

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