2019年8月18日日曜日

F取りの実態3 ― 公明党の票田 ―

 これまで見てきたように、創価学会員は時として戸別訪問のような違法行為に手を染め
てでも、公明党の得票を増やすために活動してきた。

 だが、学会員から依頼されたからといって、言われるままに公明党の候補者に投票する
一般人が、それほど多くいるとは考えにくい。

 学会員でもないのに公明党に投票するのは、どのような人たちなのだろうか。今回はこ
の疑問について考える。
 まず、前回に引き続き、信平信子氏の証言を引用する。


>  F取りと不在者投票での作戦が渾然一体となった作戦にはこんなものがあります。
>  例えば病院の票というのは馬鹿になりません。
>  大きな病院になると、そこだけで何十、何百という票になるのです。
>  五十ベッド以上の病院に入院している患者には不在者投票がおこなわれます。選管
> の人間がついて来て、ある日、不在者投票をおこなうのです。しかし、これは一斉で
> はなく、それぞれの病院で日程が違います。
>  学会では各病院に学会員の看護婦を送り込んでいますから、その日程が逐一、情報
> として入ってくるんです。
>  幹部はその日程を表にして壁に貼り、その日に向けて対策を立てていく。
>  二、三カ月前から、婦人部は徹底した見舞い作戦を始めます。学会員が入院してい
> る部屋を足場にして、一つ一つの病室を固めていくんです。
>  お見舞いの際に果物や菓子をお裾分けして入院患者と親しくなり、選挙前になって
> 初めて投票依頼をするんです。
>  中には教えても、すぐ候補者の名前を忘れる老人だっていますから、そんな人には、
> 手のひらに候補者の名前をマジックで書いたりもします。もちろん、担当の部屋は婦
> 人部で決め、見舞いの品など全て個人の持出しです。自分の功徳のためにやるんです
> からそれは当然なんです。
>  だから、婦人部の会合では、病院で知合いの老人が死んだりすると、
> 「ああ、これで一票減ってしまった」
>  なんて、不謹慎な話が飛び交ったりもするんです。
 (『週刊新潮』1996年3月7日号)


 病院に入院している患者の中には、高齢により正常な判断力を失っている者も少なくな
い。創価学会はそのような人を標的とし、「手のひらに候補者の名前をマジックで書いた
り」して、公明党の得票を増やしていたのである。

 創価学会婦人部の活動家の中には、一人でF票を百以上も集める猛者もいるというが、
それにはこのようなカラクリがあったのだ。

 公明党のもう一つの票田は、創価学会から仕事をもらっている企業の社員だ。
 創価学会は、信濃町本部や地方会館に勤務する職員、民主音楽協会やシナノ企画などの
傘下の団体・企業を合算すると、約5000人もの職員を擁する巨大組織である。

 また、聖教新聞の売り上げだけでも年間1000億円以上あり、財務等の「お布施」でも巨
額の資金を集める超金満教団でもある。

 様々な物品の購入や役務の提供など、創価学会との取引で潤っている民間企業は少なく
ない。創価学会はそのような企業に対して、公明党の票の取りまとめを依頼している。


> 〈特定団体への協力依頼について〉
>  こう題された社内メールを受け取った大手旅行代理店「JTB」グループの中堅男
> 性社員が明かす。
> 「任意の協力とはいえ、特定の候補者の応援署名を集めろというのは入社してから初
> めて。しかも、それが創価学会からの要請で公明党を応援するというんだから驚きま
> した」
>  文書は11月27日付で、JTB取締役旅行事業本部長の名前で社員向けに送られた。
> 文書にはこうある。
> 〈国内研修会をはじめとした各種需要を頂戴している創価学会様より、支援政党であ
> る公明党への支援要請がJTBグループにあり、営業政策上の観点から各事業会社に
> おいても可能な範囲での協力を求められております。
>  まず東京・神奈川・千葉に住む社員には比例代表向けに〈公明党の政治活動を支援
> します〉と題した用紙への署名集めを、太田昭宏国交相と前職の上田勇氏がそれぞれ
> 出馬した東京12区と神奈川6区の居住者には各候補の支援者名簿を作るための署名集
> めを要請している。
 (『週刊ポスト』2014年12月19日号)


 上記は平成26年(2014年)12月14日に投開票が実施された、衆議院総選挙を特集した記
事の一部である。

 JTB社員が求められたのは「任意の協力」だったとはいえ、取締役営業部長名で送ら
れ、「営業政策上の観点から」求められた要請を退けるのは、心理的な抵抗があったので
はないかと思われる(サラリーマンなら、出世への影響が脳裏をよぎるだろう)。

 創価学会によるJTBへの要請を週刊ポストが記事にしたのは、社員がリークしたから
であろうが、同様の要請が他の取引先に対してもなされた可能性は高い。

 創価学会が行っている取引の中でも特に金銭的に大きいのは、何と言っても会館等の建
設である。彼らは日本のどこかで、恒常的に新しい施設を建設中である。

 そうした背景もあって、会館建設を請け負うゼネコン各社は、公明党の票集めに非常に
協力的だという。F票の大半は建設業界によるものとの報道もある。


> 「選挙で勝つことは、信仰そのもの」――学会員の多くはそう語る。“池田教”とも言
> われる今の学会にとって、選挙こそが最も高揚感を抱くことのできる“宗教行事”だ。
>  そうやって獲得されるのが、全国七百万以上の学会票だ。ただ、近年は「F(フレ
> ンド)票」でかさ上げされているのが実態だという。その大半は建設業界から回され
> てくる票だ。全国で会館をつくり続ける学会はゼネコンにとって大の得意先である。
> 「建設関係にお願いすれば、名簿出しから投票の連れ出し(=学会で『Z』と呼ぶ活
> 動)までしてくれましたね」――。選挙活動について元本部職員はそう振り返る。
 (『文藝春秋』2015年1月号)


 創価学会は、直接、票を金で買っている訳ではないし、要請に応じなければ取引を切る
と脅したといった報道があった訳でもない。だから、こうした行為を犯罪だと断定するこ
とはできない。

 しかし、金銭の授受を伴う取引関係を利用して票の取りまとめを依頼するのは、問題の
あるやり方である。グレーゾーンの中でも、黒に近い方と言ってもいいのではないか。

 創価学会員による公明党の選挙運動の実態は、「公明選挙」よりも「金権選挙」の方に
ずっと近いと思う。

 買収などの経済的な利益に理由づけられた選挙違反は、許されない犯罪ではあるものの、
動機だけならば理解できなくもない。

 だが、「選挙で勝つことが信仰」だとか、「公明党に投票する人を増やすと功徳がある」
だとかいう理由で身銭を切ったり、法に触れるリスクを冒して選挙運動を行うというのは、
常軌を逸していると言わざるを得ない。

 もちろん、創価学会員の中には、公明党議員の口利きで生活保護を受給するなど、選挙
で公明党候補が当選することから利益を得ている者もいる。

 そういう人にとっては、選挙運動には経済的見返りがあることになるが、多くの学会員
は、そのような目に見える利害関係ではなく、信仰(=公明党の選挙運動)が、超自然的
な力で「ご利益」をもたらすと純粋に信じている。

 このような常人には理解できない理由で選挙運動に入れ込む学会員たちの愚かさを嘲る
のは簡単だが、その愚昧さを利用して操る本当にごく一部の幹部が、日本の国政を左右で
きる力を持っている現状は笑えない。

 原田会長をはじめとする信濃町の宗教官僚たちは、日本国民に対し、一切の説明責任を
負ってはいない。それどころか学会員に対してでさえ、池田大作の現状や財務の使い道な
どを正直に説明したことは、ただの一度もない。

 彼らは一体、何を目指しているのだろうか。
 誰にも何も説明しない連中が、国政に大きな影響力を持っていることに、私は空恐ろし
さを感じる。本稿をお読みになった皆さんは、どのように思われただろうか……。

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