2017年12月29日金曜日

書評『「人間革命」の読み方』

 本書の著者、島田裕巳氏は言わずと知れた著名な宗教学者であり、創価学会についての
著作も少なくない。

 この本では題名のとおり、表向き池田大作の代表作ということになっている『人間革命』
『新・人間革命』、戸田城聖著『人間革命』、丹波哲郎主演による映画版「人間革命」の
内容が紹介されているほか、それらの作品で語られている出来事について、別の資料に基
づいた観点からの考察も加えられている。

 ※ 以下、本稿で『人間革命』について言及する場合、池田大作版『人間革命』につい
  て述べる。

 特に『人間革命』については、全12巻のあらすじが書かれている。創価学会を理解する
上で『人間革命』は外せないが、その『人間革命』を未読の一般人にも配慮した構成とな
っている。

 また、『人間革命』の本当の著者は篠原善太郎氏であったこと、創価学会第二代会長で
あった戸田城聖が、酒を飲みながら講義や講演を行っていたことにも触れられている。

 中でも興味深かったのは、『人間革命』の「第2版」について論じられた箇所である。
創価学会は、平成3年(1991年)に日蓮正宗から破門されたが、『人間革命』の大部分は、
それ以前に執筆されているため、当ブログでも論じてきたように、現在の創価学会にとっ
ては不都合な箇所も少なくない。

 そうした箇所が第2版では、書き換えられているのだという。島田氏はこの点について、
「いったんは正史として記述された出来事が、後世において書き替えられるということは、
歴史の改竄にもなりかねない」と批判している。

 現在の創価学会では、『人間革命』『新・人間革命』について、「精神の正史」「信心
の教科書」と位置づけている。その「精神の正史」を、都合が悪くなったからといって平
気で改竄することが、創価学会員にとっては〝正しい信仰〟なのであろうか。

 これではインチキ宗教といわれて当然である。まあ、カルト信者に何を言ったところで、
カエルの面に小便であろうが。 

 それはされおき、私はこれまで島田氏の著書から多くのことを教えられてきた。本作か
らも学び得たことが少なからずあった。今後、当ブログでもそれを役立てたいと考えてい
る。

 上述のように、本書は『人間革命』を読んでいない者にも、理解しやすいように工夫し
て書かれているので、創価学会に関心はあるが、今まで『人間革命』を手に取ったことは
ないという方にとっても、一読の価値はあるのではないかと思う。

 私はたいへん興味深く読んだが、敢えて欲を言えば、もう少し批判的でもよいのではな
いかと思わないでもない。著者の宗教学者としての立場上、研究対象に対して過度に攻撃
的なスタンスはとりづらいことは十分理解できるが。


 ※ 『「人間革命」の読み方』(ベスト新書)は、2017年12月20日付で発行された。