に向けて配布するマスクのうち、妊婦向けのマスクを納品した「株式会社ユースビオ」が
ネット上で話題になっている。
他の受注業者は、総合商社の伊藤忠商事や医療用品の製造販売を手掛ける興和など、実
績ある企業であるのに対し、ユースビオは設立されてまだ3年目の全く無名の会社で、医
療用品の取り扱い実績もないことから、受注の経緯を疑問視する声が上がった。
しかも、同社の所在地をGoogleストリートビューで確認すると、公明党および同党所属
の参議院議員・若松謙維氏のポスターが掲示されていたことから、「癒着があるのでは?」
との批判を浴びることとなった。
同社の桶山社長が、若松議員に12万円の寄付をしていたことも明らかになった。
このことについて樋山社長は、マスコミからの取材に以下のように答えている。
> 「若松さんは議員になる前からの知り合い。僕は創価学会の3代目でもともと学会員
> だから、その関係で知り合いだった。いつからかは覚えていないけど、どこかの会合
> で会って、選挙に出るとき『手伝って』と言われて、行ったこともある。公明党は献
> 金を要求しないが、寄付は個人として出した。癒着といっても、どう癒着するのか。
> 県会議員や国会議員の関わりも言われていますが、彼らが僕が受注したと知ったのは、
> 決まったときですから。事前に彼らにお願いします、と言ったわけじゃない。こうい
> うビジネスは、彼らが入るよりも自分でやったほうが早いですから。公明党を除いて、
> 安倍総理とか、麻生財務相とか、一切付き合いはないですよ」
(『週刊朝日』オンライン限定記事 2020/04/28)
桶山社長はビジネスに関して政治家の力を借りたことはない旨を主張しているが、彼の
言い分とは異なる報道もある。
桶山氏は「株式会社樋山ユースポット」なる会社の代表も務めているが、この会社が消
費税を脱税した嫌疑で平成29年(2017年)12月に告発され、翌年6月、福島地裁から懲役
1年6カ月、執行猶予3年、罰金400万円の判決を受けている(つまり現在も執行猶予中)。
> 事情を知る関係者は「当時、樋山は政治家の名前をうたって、ブローカー気取りだ
> った。ほぼ実態のない会社を複数持ち、そこを利用して脱税していた。手口を見る限
> り、指南役がいたと思われる」と明かす。
(『東スポWeb』 2020/04/28)
また、今回、ユースビオがマスクを受注した経緯についても、行政関係者の以下のよう
な発言が報じられている。
> 東日本大震災のときから交流のある福島県庁の幹部に、ユースビオ社について聞い
> たところ、こんな答えが返ってきた。
> 「今回の報道で初めて知った。地元でも無名の会社。通常は実績のまったくない専門
> 外の業者を、県が国に紹介するなどありえない。だが、今回は緊急事態という建前が
> あるので、政治力で決まった可能性はある」
(『東洋経済オンライン』 2020/04/30)
マスク受注業者の選定に関して、菅官房長官は「議員の口利きはなかった」と述べてお
り、桶山社長も「偶然が重なった結果」と言っているが、この件については、いささか出
来過ぎた「偶然」があるようにも見える。
桶山社長の自宅は裁判所に差し押さえられ、4月9日に競売の公告がなされ、5月には入
札の予定になっていた。
しかし、4月24日に債権者が競売を取り下げたという。
桶山氏がマスクで得た大金の一部で、債務を返済したのであろう。
事業に失敗し、自宅まで差し押さえられて競売にかけられていた人物が、降って湧いた
ようなビジネスチャンスで大金を手にしたわけである。
今回のマスク調達は、随意契約によってなされている。
国や地方公共団体が、億単位に及ぶような契約をする場合、競争入札を行うことが一般
的だが、コロナウィルス禍への対応という急を要する事業であったために、随意契約にな
ったのであろう。
国の事業の入札に参加する場合、資格審査があり、直近の財務諸表や納税証明書等の提
出を求められる。
マスク納品業者が入札で選ばれていた場合、ユースビオ社は資格審査の段階ではねられ
ていた可能性が高い。
同社の経営は事実上、破綻していたと見られるし、それのみならず、先に述べたように
樋山社長は消費税法違反で有罪となり、現在、執行猶予中の身である。
脱税で有罪になって執行猶予中の人物が、税金を原資とする国の事業で何億円もの金を
この件に関しては不審な点が多すぎる、そう思うのは私だけではないはずだ。
是非とも、国会の審議で真実を明らかにしてほしいものである。
参考サイト
スポニチ
週刊朝日オンライン
東洋経済オンライン
レイバーネット
追記
社民党の福島瑞穂議員が、この件について厚生労働省マスク班に照会して得られた回答
をツイッターで公表している。
https://twitter.com/mizuhofukushima/status/1260548928627372032
それによると、ユースビオとシマトレーディング合わせて5億円の契約は、昨年度予算
の予備費によるものだったとのことである。
そして、今年度予算でユースビオは約29億7千万円の契約を、国と結んだという。
これだけ巨額の契約が不透明な経緯で決まっているのは、どう考えても好ましいことで
はない。
にもかかわらず、民放各局をはじめとするマスコミが、この件を積極的に追及している
ようには見えない。創価学会に関する報道は、やはり現在もタブーなのだろうか……。